楽器のセッティングはひとりひとり驚くほど違います。

録音では、楽器から出たそのままの音を渡して、
あとはエンジニアさんにお任せする場合も多々ありますが、
ライブではアンプから出力されるまでが確実に自分の責任の範疇なので、
どのように音作りするかが問われます。

セッティングがひとりひとり違うわけですから、
そこで生じる問題や改善したいこともひとりひとり違ってきます。

ぼくも、ああこんな機材があったらいいなぁと、
幾つか問題を抱えていた時にMBIを紹介してもらい、
自分が望むような機材を作ってもらうことにしました。

沢山のやりとりを重ねてできたのが、このセレクターです。

エレキとコントラバスをライブで持ち換えるような場合、
以前はアンプを二台使っていましたが、
最近では、音響的にもレンジが広いベースアンプが増えてきたために、
一台のアンプでそれらを鳴らすようになっています。

ヘッドが2chのアンプであれば大丈夫ですが、
1chのアンプの場合に問題になるのが、
エレキとコントラバスの音色と音量レベルの差です。

それぞれの楽器に適した音色にしたうえで、
ふたつの音量を合わせる、というのがひとつの目的です。

そしてもうひとつ、これが重要で、
そういう機材が見つからずMBIに作ってもらったのですが、
ふたつの楽器を独立した回線でPA卓に送ることができること。

PA卓は別個のチャンネルで受けてもらうということです。
これがこのセレクターの一番の特徴です。

楽器が違えば当然PA側で施したいEQなども変わってくるので、
違う回線で、しかもセレクトした回線だけが
オンになるように送れることがとても重要なのです。

あともうひとつ。

ふたつの楽器を持ち換える場合、
その組み合わせはいくつか考えられます。
そこにシンセベースが入ってくれば
当然インプットのレベルが非常に変わってきます。

そういった可能性も考え、
どんな組み合わせでも対応可能なようにプリアンプの設計をしてもらいました。

これまでバッファーにはほとんど興味がなく、
むしろ邪魔な物くらいに思っていたのですが、
このセレクターに入っているバッファープリアンプで、
その先入観がなくなりました。
非常に自然で使い勝手が良いのです。

さらにもうひとつ。

DI機能は付けていません。
「無い」ということが特徴というのも変ですがとても重要です。
コントラバスに向いたDIとエレキ向きのDIは違うからです。

ベースはDIもとても大事な音色の一部なので、
DIはいろいろ選べる方が得られるものは大きいのです。

実際に例えばKIRINJIのライブでは、
エレキベースとコントラバスの場合もあったし、
エレキベースとシンセベースの時もありました。
そしてその時々によってそれぞれに繋ぐDIも変えていました。

さて、いきなり色々細かく紹介したので、
どんなセレクターなのか、
いまいちピンとこなかったかもしれません。

それ当然なんです。

もしすぐにピンときた人はぼくと同じ問題を抱えていたということです。

ピンとこなかったかたは、
是非自分のセッティングの中の問題を見つけ出して、
必要な物を探してください。

MBIはその手助けをしてくれるよ、という話でした。

これがそのセレクターです。

MBI製は他にもマイクとラインを混ぜるブレンダー、
そしてプリアンプも愛用しています。